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都内でも屈指の高級住宅街。その一角に尾上の本家はある。贅沢な区画と贅沢な平屋造りの一戸建ての家屋は、元々商家だったという先代の羽振りの良さが伺える。
実家へ戻ってすぐ、政はあらゆる活動に手を染めた。
まず、練習と仕事の拠点を自宅に置いた。
部屋数の多さと広さは教室を開くにうってつけだった。かねて準備してきた書道教室の開業が現実味を帯びる。
元々教えに通っていた教室での指導は従来通り続けた。都心に拠点を移したことで、今まで間遠くなっていた付き合いへ駆り出されることも増え、そこから新しい縁やチャンスが廻ってきた。
彼の仕事を考えると何も悪いことはなく、むしろ良いことづくめだった。
若者は新しい流れを当然のように受け止め、スランプすら飲み込んでいく。
政は飛躍的に伸びた。
加奈江の生活も一変した。
以前のように一日の大半を内職をして過ごすようなことはできなくなり、自然と仕事は減らさざるを得なかった。
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