【1】あたらしい家族

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政が言うには、父親はある頃を境にして自宅とよそを半々で過ごすのが当たり前になっていた、と。 もちろん仕事で家を留守にすることもあっただろうが、外泊をする理由は別にある。 政が小学生だった時、彼には弟ができた。 母親は別の人で、いわゆる異母兄弟という間柄だ。 義両親は変わらず婚姻関係を続けていたから、弟は不義の子、母親の立場は愛人。 その人と本妻との間を行き来する生活を十年以上も続けていることになる。 はっきり義両親の口から聞いたわけではないけれど、義両親は特段隠すこともなく、加奈江の前で振る舞っていたので、彼女も知らない振りはせず、受け止めることにした。 尾上家の『いきさつ』は、青山の家へ居を移す時に水流添の実家に伝えた。大っぴらに言うことでもないかわり、一度はきちんと伝えなくてはと思ったからだし、予断を持ってもらいたくなかった。 薄々、妙なものを感じていたらしい親や姉は、改めて伝えられると、一様に驚き、絶句した。 しかも、『愛人』はご近所さんなのだ。 「道理で……。政さんのお父様、どこかでお見かけしたことがある気がしたのよ……」と言ったきり、母は黙った。
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