第1章 はじめに

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最近になって少し意識し始めた。 …本当はずっとずっと前から気づいていたのかもしれない ただ現実に目を背けて見ないようにしていた結果、ここまでだらだらと来てしまったともいえる。 始まりはちょっとした老化に気付いた時だった。 肌の様子がおかしい、というか30歳手前に来て明らかに毛穴の開きだったり、シミ、シワが目につくようになってきた。 でもそんな小さなことは自分が生きてきた人生のコンプレックスの中では本当に小さくミジンコみたいなものだ。 人は誰だってポンプレックスの一つや二つはもっている。 でも自分は違った。 全身がコンプレックスの塊みたいな存在だ。 ただ、そのことに強く反発した自分は見たくないことをいいことにただただ目を背け続けて大人になった。 やがてそれは現実逃避というか、これ以上悪化することに激しい嫌悪感を抱くことになり、つい先日の老化に気付いた時、心の奥底の方に追いやったはずのコンプレックスに対する劣等感が蘇った。 これは、凝縮されたコンプレックスの個の中で、反発して生きる男の話である。
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