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「――――私はあなたを正妃にと望みました。あなたの国の伝承は興味深い……それとシラーの力も解き明かしたいのです」
初めて会った男は、私がもっとも嫌う力の話を持ちだした。
我が国に伝わる神秘の力の話を。
しかも、満面の笑みを浮かべて。
男の不愉快な言動に顔色一つ変えることなく、目の前に置かれていた茶器を手に取り口元へと近づける。
男に気付かれないように香りを嗅ぎ、不審な何かが入っていないか確かめる。
(エリカ……わずかですが、毒草の一種が混じっています。飲なまいで下さい)
男とは違う別の声が、頭に直接響き警告を鳴らすが、それには構わず一気に飲み干す。
(エリカ!)
酷く焦った声が聞こえ、男の背後で控えていた侍女達が、お互い目で合図を送ったことを確認し茶器を戻す。
「もう1杯下さる?」
男を無視して侍女にそう言うと、何人かがビクリと身体を揺らした。
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