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「……あなたは噂通り表情一つ変えないのですね――――彫刻の姫君」
『彫刻の姫君』
祖国、シラーからハイブリーまでは馬車で1週間。この国に着いたのは6時間前。
それだけで、私の愛称は『彫刻の姫君』と定着したらしい。
一切、喜怒哀楽を出さない人間味のない彫刻のように冷たく微動だにしない冷酷な姫君。
可愛げがなく何を考えているのかわからない。
この愛称が、発明大国と言われるハイブリー帝国へと嫁いだ私への、皮肉を込めた一番目の贈り物だった。
「たいそうな愛称までいただけて光栄ですわ……ファルシア皇帝陛下」
目の前に優雅に座っている男は、正真正銘このハイブリー帝国の若き皇帝。
前皇帝の死後、若干21歳で即位し、統治し始め7年が経つ。
国を治めることに全てを捧げた男は、ようやく他国から姫を受け入れた。
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