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「邪魔ではありませんのでお気になさらないで下さい。それに、これはお気に入りですの」
髪飾りに触れ答えると、男は笑みを絶やさないが、いささか不満そうだ。
「しかし、夜会の時にその長さではいささか都合が悪いですよ。蜘蛛のそれも……趣向がいささかズレています」
男はどうしても、この髪と蜘蛛が気に入らないらしい。
私から言わせれば、男の髪も切ったらいいと思うし、その嘘くさい笑顔も止めて貰いたい。
どう見ても作り笑いだ。
男の華やかな容姿に地位もあれば、優雅に遊んで暮らしてきたのは見ればわかる。
どことなく雰囲気が軽い。
「……わかりましたわ。陛下の前では今後、髪は結い上げます。それでお許し下さいませ」
あえて、蜘蛛の髪飾りには触れない。それに、髪は絶対に切れない理由がある。
――絶対に。
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