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ハット野郎は仰々しく、やれやれ、と嘆息し、別の話題を引っ張りだした。
「しかし先公はまだかね」
その言葉に反応し、黄土色の髪に隠れた垂れた犬耳がばさりと動く。
そして苦々しい顔をして、涼しげな顔のロン毛ハットに問う。
「お前……まさか、二年生でもやるつもりじゃないだろうな」
「んー、どうだかね。相手にもよるな」
どこか余裕を見せるそいつに文句の一つも言おうとする犬男だが、諦めたように椅子にもたれ掛かって天井を仰いだ。
……犬の獣人である、山田ネアル。去年から彼と同じクラスかつ、同じ寮部屋に住んでいる、悪魔族の佐藤ベロスと、猫の獣人の鈴木ニャガ。
この三人は、ある特別な方法で二年生に進級していた。
本来ならばきちんと学期末のテストをパスし、単位を取らなければ進級出来ないのが普通の学校のシステムというものだが、この学校はそもそも少し特殊であった。
当学校、セントレーニア国立士官学校は、国の定めた義務である、『徴兵』と『教育』を兼ねた学校施設で、十六歳からの男女が三年間、ここで暮らすことになっている。
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