Alice of oblivion

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「四階には他に一人、ウルという男の子が住んでいる。歳は、君と同じくらいだったと思う」 「ウル…君?」 「ああ。最初は言葉に戸惑うだろうが、アリスもその内慣れるさ」 言葉に戸惑う?遠いとこから来た人なのかな。 そんな会話をしていると、エレベーターが四階で止まった。 《バタンッ》 「えっ」 エレベーターから出ると、右側から扉の閉まる音がした。 驚きつつも音がした方を見たけど、ただ長い廊下が続いているだけ。 「ウルだ。気にするな、少し人見知りなんだ」 「あっ…はい」 確かに、知らない人がいたらウル君もそりゃ驚くよね。 私はアカネさんの案内で、四階左手の部屋に通してもらった。 「ここが君の部屋になるが、問題はあるか?」 「大丈夫です」 「ならいい。君の使う鍵は…私が今から取りにいくが…」 そうアカネさんが言いかけた時、私のお腹がぐぅと鳴った。私は、恥ずかしいやら何やらで、返す言葉もなかった。 そんな私を見て、アカネさんはちょっと笑ったような顔をした。 「二階は食堂や談話室なんだ。部屋の鍵を取りに行く前に、そっちを先に案内しよう」 「す、すみません」 私はアカネさんと一緒に、再度エレベーターへと向かう。 エレベーターは、七階を示していた。 もしかしたら、誰かが乗っているかもしれない。私は少し緊張しながらも、静かにエレベーターを待つ。 チーンという音がして、エレベーターの扉が開――「やあやあやあお久しぶりはじめまして!」――いたと思ったら、アカネさんが閉じるボタンを押した。 「残忍酷薄だよアカネ~。もっと優しく、柔和温順に! オレってば再三再四言ってるよ~」 扉が閉まるより早く、エレベーターの中から黒い塊が喋りながら飛び出してきた。飛び出すというか、ぬるっと抜け出てきたというか…。 「こちらははじめましてだね。オレ、カラバって言うんだ~、君は?」 黒い塊は、よく見たら黒い布を全身にまとった人だった。顔と思われる部分には、笑ったような顔の仮面がはめられていて、のっぺりとした仮面が私を見ている。 「わ、私は、アリスです」 「アリス?」 仮面に穴は開いていないはずなのに、強い視線を感じる。 カラバさんはしばらく私を見つめた後、首を傾げた。 「アリス…いい名前だね~! これからよろしく!意気投合できるような仲になれるといいね~」 「…はい!」 隣から、「こほん」とアカネさんの咳払いが聞こえた。
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