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『……き』
『ゆ……』
『ゆう…』
声が聞こえる。遠くから呼ぶような…。
『…うき』
だんだんはっきりと、それは近づいてくる。
「勇騎ッ!」
気がつくと、仰向けに倒れていた俺を抱き起こしていたのは、見知った顔だった。
「…ああ、美穂か」
「ああ美穂かじゃないわよ!なんで!何があったの!?」
いつの間にか降り頻る雨。冷やされた身体はそうは動きそうになかった。
「…戦って負けた」
「…!」
一瞬表情を凍らせたと思ったら、何を思ったか美穂は俺を肩で担ぎ、さっさと手近な建物まで運んだのである。
「…悪いな、心配かけて」
「…そう思うなら抹茶チョコクッキープラペチーノ奢って!」
某カフェの人気新商品の名を出す、そしておあつらえ向きというか雨を避けるために入った建物の2階は、まさにその店だった。
そして店の中に入ると…
「「あ」」
「よう、お二人さん…デート中に雨に降られたか?」
士と女性が一人。
しかも女性は…
「士くん!光家秘伝!笑いのツボ!」
「ぐふっ!っぁはははははは!ナツミカン…!てんめぇ…」
光 夏海その人であった。
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