小さなつぼみ

5/11
前へ
/242ページ
次へ
この仕事の気に入っているところは、 事務所が4階にある事。 窓から広がる景色は、ふいに私の足を止める。 小さくちぎったような白い雲が、 遠くから流れてくる。 はっ。 しまった。また自分の世界に入ってしまった。 鞄から財布を出しながら、気づかれないように 河野亮二のほうをちら見した。 ドキっ。 しっかり目が合った。 見てた・・? 「あの、出してきます!」 ぼーっと窓の外を眺めていた自分を見られたのが、 妙に気恥ずかしくて、封筒を手に慌てて歩き出した。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

577人が本棚に入れています
本棚に追加