咲き誇る花言葉

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彼の言葉には、 必ずその先があって、 その時は気がつかないことが多いけれど、 ただ分かるのは、 振り返ると、全てがつながっているという事。 さぁっと優しい風がふいて、 また私達は桜の花びらに包まれた。 「あ。」 小さな約束の箱に、 ふわりと一片の花びらが舞い降りた。 目を輝かせて見上げると、 やっぱり河野も同じ顔をしていて、 ふふっと、一緒に笑った。 「那波、手出して。」 ひょいと華奢なリングを抜き取って言った。 「え・・っと。」 かぁぁっと赤くなりながら、 両手を出した。 「・・・・。」 目を丸くした河野の口元が少し緩んで、 「・・・いや、右手いらないし。」 「あ・・・。」 また変な事やった・・。 恥ずかしそうにちらりと下から覗きこみ、 右手を引っ込めた。 やれやれって顔をしながら、それでも嬉しそうに、 そっと私の左手を握り締めると、 伸ばした薬指を優しく撫でるように、 するりと指輪をはめた。 「きれい・・・。」 その輝きをぼおっと見つめると、 知らないうちに、 同じくらいキラキラした雫が頬をつたっていた。 長い指先でそっと拭うと、 両手で頬を包み込み、 ふわりと、 桜が舞うようなキス。 私達は、咲き誇る桜に包まれて、 一番大切な約束をした。
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