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ジグルズは剣を鞘に戻し、大きく溜息をついた。何もかもが分からない状態に酷く頭を悩ませる。しかし、彼が悩みを加速させるよりも先に幾つかの足音が聞こえてきた。
「おい! 人間じゃねえか……」
声がした方を振り向く。そこにはジグルズの腰程までしか高さのない生物が三匹程いた。
赤、青、緑と三色いる生物は、長い耳とつり上がった目をしていて、特長的なのはその大きな口である。牙が無数に生えていて、かなり凶暴的だ。
「あ、あの、すいません!ここが何処なのか教えて頂きませんか!?」
ジグルズから恐るよりも先に口から言葉か漏れる。自分の記憶にこのような生物はもちろん記録されていないのだが、それよりも疑問を解消したいのだ。
「何言ってんだおめえは! 人間がノコノコと森さ中入ってきて! 俺達精霊をおちょくってんだ!?」
三匹の内先頭に立つ赤い生物が手に持つ石鎚を振り上げ、威嚇しながら言い放った。
「違います! おちょくっているだなんて! 僕はここが何処かも、自分が誰のなのかも分からないんです! 何も覚えていなくて……」
両手を下に向け広げ、さも敵意の無い様をアピールするジグルズ。しかし彼らには届いていないようだ。三匹とも手に待つ石鎚を掲げ、ジリジリと歩み寄ってくる。
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