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2185年、初夏――
肌を焼く夏の日差し。
果てしなく続くと思われた一本道の終点。
人類最後の砦と呼ばれるそれは、圧倒的な存在感を伴い俺を迎え入れた。
異常児並びにデザイナーチャイルド要請施設にして、『敵』に対抗するための拠点基地【エスポワール】。
拠点基地とは言ったものの、それはすでに一つの基地としての規模を超えており、すでに城塞都市と言っても過言ではない。
「君空 光揮(キミゾラ ミツキ)だな。待っていた」
固く閉ざされた城門の脇にある小さな扉から中に入ると一人の男性が近づいてきた。
黒で統一された軍服の首筋と肩には白い飾りがついており、夏風を受けて小さく揺れている。
「あ、初めまして、君空です」
今までこういった職の人と触れ合う機会がなかったため、挨拶の仕方がわからない。
ひとまずお辞儀と握手でいいのか?
そう考えながら深々と頭を下げると男性を小さく笑いそれを制した。
「そんなにかしこまらないでくれ。君はまだ正式には軍に所属していないのだから」
「はぁ……」
「俺の名前は風音 弦磁(カザネ ゲンジ)。まぁ、自己紹介し合ったところ悪いが、顔を合わせることもそうないだろう」
そう言って風音さんは自身で運転してきたのだろう軍用ジープに乗り込む。
「ここは広いからな、基本的には車か路上電車での移動がほとんどになるだろう。覚えておくと後でがっかりしなくて済むぞ」
「そうなんですか」
「あぁ、一部のお偉いさんを除いて軍から車やバイク、自転車も含めて乗り物の支給はないからな」
最後に「これは備品をちょいっと借りてきた」と言いながら風音さんが俺に乗るよう促す。
一般車と違い、車体が高いジープに少し苦労して乗り込むと若干タバコ臭い。
横を見ると既にタバコを加え、ポケットから取り出したライターで着火していた。
「あぁ、原則車内での喫煙は厳禁だからな?」
「え、あ、はい……」
これはツッコミ待ちなのだろうか。
いやでも、今日来たばかりの俺がそれをしていいのか……?
そう思ってるうちに車は走り出す。
少しだけ開けられた窓から夏の風が流れ込み、熱くなっていた体を少しだけ冷ましてくれた。
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