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少し進むと今までの軍の拠点といった雰囲気から、普通の街中のような場所に出た。
通りは自由な普段着を着ている人が目立つが、ちらほらと軍服を着た人も見受けられる。
「ここが居住区画って場所だ。まぁ、そのまんま軍関係者やその親族、他にもエスポワールに住民登録した一般市民やらが住む区画だ」
「思った以上に……」
「普通だろ?」
「普通ですね」
一般的には城塞都市と呼ばれてはいるが、一応の軍拠点。
もっと殺伐としたものだと思っていた。
「ま、君空はしばらく訓練生として寮住まいになるが、正規の士官になればここのどっかに住まいを借りて住むことになるぞ」
「風音さんも居住区に?」
「え……」
途端に風音さんの顔が驚きのものに変わり、そのまま凍りつく。
そして若干、運転中のため本当に若干だが俺から体を離した。
「いやぁ、まさかいきなりどこ住みか聞かれるとは思わなかったわー。え、まさかだけど、そっち系の人?」
そう言いながら、オカマのジェスチャー。
これは非常に危ない(主に俺の社会的な何かが)誤解が生まれた。
まさか初日からこんな危機的状況に立たされるとは思っていなかった。
「ちっがいます!」
「お、おぅ……」
上半身をフルに活用しながらの勢いと迫力を兼ね備えた全力否定に若干引き気味の風音さん。
向こうは冗談だったんだろうが、もし本当に誤解されていたら洒落にならない。
いや、マジで……。
「あの、本当に違いますからね!!」
「せ、せやな……」
「ちょっと聞いてますー!」
なぜかもう年上とか、先輩とかいろいろと飛び越えて失礼な極まりない領域だが、肩を掴んで揺さぶっていた。
「うおおおお、あぶねぇって、っちょ!」
「あ、すみません」
「あぁ、気にすんな」
「ほんとにすみませんでした」
「いいっつうの、誰にもいわねぇよ」
そう居ながら親指だけ立てたサムズアップ。
そんなことに対して謝ってたわけじゃないからっ!
再び掴みかかろうとしていた俺を片手で制ししながら、風音さんは笑っていた。
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