第一章

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しばらく風音さんからエスポワールの区画説明を受けながら景色を眺める。 そうしている内に徐々に住宅街から離れていき、城門程ではないが大きな門にたどり着いた。 「ここが住居区画と軍用区画の境目というよりは接点と言ったほうがいいか。一部のお偉いさんや特例を除いて、住居区画と軍用区画を行き来するにはここを通るしかない。もちろん、一般人はここから先は立ち入り禁止だ」 そう言って門の近くに立つ数人の男性の近くに車を寄せると車窓を開けた。 「IDカードの提示と念のための検査をさせていただきます」 「出る時も言ったが、ただ新人を連れてきただけだぜ」 「ハハ、すみません。一応規則なもので」 風音さんと短く会話した後、男性たちはジープに変な装置(たぶん金属探知機みたいなもの)を翳していくと同時に、トランクを開けて中をチェックしていった。 「とまぁこんな感じで、入出の際にはIDカードと簡単なボディチェックやらの検査を受けることになる。まぁ、銃を持ち出したりとかしない限りは大丈夫さ」 「IDカードは……」 自分の身分を証明するものだ。 もちろん、いずれは俺にも支給されるのだろうけども。 「あぁ、それも明日には手元に届くと思うぞ。無くすと結構面倒な手続きあるからしっかり持っておけよ」 「あ、はい」 そんな会話をしている内に検査は終わったらしく、外から「はい、通っていいですよ」と声が聞こえてきた。 「んじゃ、行きますかね」 検査を終えた男性職員に軽く頭を下げて、車は再度走り出す。 「ま、数日間は軍用区画に缶詰だ。ここを通るのも一週間くらい先だろうさ」 缶詰という言葉になかなかいいイメージは持てないが、一週間なら想像していたよりも短いな。 まぁ、一週間で訓練生終了というわけでもないのだろうけど。
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