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どうせ、画材道具を買うくらいしか使い途のない金だ。
ならば僕が代わりに使った方が、世の中のためになる。
なんせ、女の子はお金がかかるからなあ。
「先輩、まだですかー?」
階下から春奈の声。
最近、付き合い始めたばかりの、彼女。
まだ身体の関係ではないが、そろそろだな。
僕は容姿に恵まれてはいるが、付き合う女は厳選する。
すぐやらせてくれそうで、かつ、後腐れのない女…そういう女を選ぶ。
「また新しい女か。」
兄貴がカンバスを見ながら言う。
顔は痘痕(あばた)だらけで、体毛が濃く、いつも変な体臭がする。
「付きまとわれて困ってるんだ。…じゃあ、行ってくるよ。」
「ああ、気をつけてな。」
兄は、基本的には性格はいいと思う。
昔、僕が川で溺れそうになった時も、みっともないカバみたいに必死に泳いで助けてくれた事がある。
…両親にしてみれば、兄が死んで僕が生き残ってくれたら、どんなにか良かったろう。
僕たちは二人とも無事だった。
兄の勇敢な行いは、誰にも誉められる事はなかった。
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