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冗談……。 彼が僕にキスするはずがないのに。 真に受けてしまった自分が、ひどく恥ずかしかった。 「……大人をからかわないでください」 羞恥心から、僕は小声で言い返した。 「すみません。つい」 つい、じゃない。まったく。 「怒ってますか」 「……怒ってません」 怒ってはいないけれど、自分だけ動揺させられていることが、何だか悔しくて、寂しかった。 「お詫びに、夕食は村上さんの好きなものを作りますから」 元、自称息子に。 僕だけが今も振り回されている。
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