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しかし、僕がそう思っていることなど知らない佐藤君は。 「慣れていいですよ。ここを離れても、ごはんくらい作りに来ますから」 「……あ、ありがとう」 ちっとも、忘れさせてくれようとしない。 優しいことなんて、言わないでほしかった。いつかは、いなくなるのだから。 好き、だなんて。全部全部なかったことにしてしまいたい。 そうしたら、また前と同じ生活に戻れる気がする。 「お風呂、さっき準備しといたので。ごはん食べたら、先入っちゃってくださいね」 「……はい」 今だけだ、もうすぐ終わる。 そう思っておかないと、好きなひとと同じ家にいるという現実に、押し潰されてしまいそうな気がした。
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