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歯ブラシに歯磨き粉を絞り出しつつ、僕は昨夜四谷さんから受けたアドバイスを思い出す。 まず、佐藤君に付き合っている相手がいないか確認すること。 次に、好きという気持ちを態度で表すこと。 確かに、ひとつめは必要だと思う。佐藤君が恋人と別れたのが、約ひと月前。もし今、彼が別の誰かと付き合っているのだとしたら、自分にはどうすることもできない。 ふたつめに関して。 とりあえずスキンシップを増やして距離を縮めろ、と四谷さんは言った。相手に自分を意識してもらうことが大切なのだと。 ……できるかな。自信はない。 歯磨きを終え、口をゆすいでリビングに戻ると、ちょうど佐藤君が出かけるところだった。 「俺、先行きますね」 「あ、うん」 リビングから出ていく彼をぼーっと見送っていると、ふと、テーブルの上に置かれたSuicaが目に入った。 「あ」 佐藤君の。 僕はそれを手に取り、玄関へと急いだ。
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