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肌寒い空気が頬を撫でる。早く家に帰って温かいごはんが食べたい。
一呼吸置いて、違います、と僕は答えた。
「それが佐藤君のことを指しているのなら、ですけど」
とはいえ、僕はどの大地さんともお付き合いはしていないので、答えは変わらないのだが。
「でも。大地と一緒に住んでるんでしょう?」
確かに、そうだけれど。
「彼は親戚の子で、今住むところがないと言うので一時的に預かっているだけです」
「嘘……」
「本当です。佐藤君に確認してもらえれば分かります」
「……」
「あの、あなたは佐藤君のご友人か何かですか……?」
黙り込んでしまった彼を置いて立ち去る訳にも行かず、疑問を投げかけると。
「……れ」
「え?」
車の通過する音に紛れ、微妙に聞こえない。聞き返した僕に、少々キレ気味に彼は答えを返した。
「……元カレ」
不意に、佐藤君と言い争う彼の姿がフラッシュバックした。
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