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以前、佐藤君と揉めていた青年。目の前にいる彼と、そのときの青年の顔がぴたりと重なる。 あの夜。 浮気されて、別れたのだと。 佐藤君が自虐的に話すから、無性に苛立って。男とだってできる、と彼に身体を差し出した。 思い返すと、心底恥ずかしかった。 「元彼さん……」 「そう。……大地と本当に付き合ってる訳じゃないなら、連絡先教えてよ」 「え?」 「大地、あれから全然電話も出てくれなくて、番号も換えたみたいだし。大学で会っても無視するし」 「……それ、普通じゃないですか?」 つい、口を挟んでしまった。 ただの同居人が口出しする問題ではないかもしれないけど、でも。 「あなたが浮気して、それで別れることになったんですよね。もう顔も見たくないと思われても、仕方ないんじゃないでしょうか」 佐藤君は傷付いていた。 たくさん、自分を責めていた。 そうさせたのがこのひとなのだと思うと、薄暗い感情がじわじわと胸の内を占拠していくのが分かった。
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