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「……あんたには、分かんないよ」 「ええ、分かりませんし、分かりたくもないです。人を傷付けたなら、復縁の前に、まずは謝罪すべきではないでしょうか」 佐藤君は、訳もなく相手を拒絶したりはしないと思う。 このひとのことを、それだけ好きだったんだ。だから、許せないんだろう。 もしかしたらまだ好きなのかもしれない。 そう思うと、胸が締め付けられる思いがした。 「本当に好きなら、ちゃんと謝らないと、先に進めないと思います。佐藤君も、あなたも」 「何言って……」 もし佐藤君が彼のことを好きでいるのなら、仲直りしてほしい。 もちろんそうなってほしくない気持ちもあるけれど。それより、佐藤君が笑って日々過ごせることを願う気持ちの方が、自分の中でほんの少し強い。 「他人の僕ではなく、本人に言わなければ伝わらないことが、きっとあると思うから」 真剣に、目の前の彼のことを思って口にした言葉は。 「何か、……ウザいし」 むすっとした声に切り捨てられた。
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