1999人が本棚に入れています
本棚に追加
怒っているというよりは、まるで拗ねているかのようだ。
悪いひとではないのかもしれない。困ったように地面を見つめる瞳は、自分の感情をもて余し、苦しんでいるように見えた。
「そう、かもしれないけど。佐藤君……、自分の身内には、幸せになってほしいですし。君も、今のままじゃつらそうだから」
言葉通りで、特に他意はなかったのだが。
「あんた、おせっかいって言われない?」
「え……?」
そんなふうに言われた記憶はない。いいえ、と僕は首を横に振った。
「つか、俺はあんたの身内じゃないから関係ないし」
「あ……、うん。そうなんですけど。何か、つい」
おかしいな。最初は彼に嫉妬や苛立ちを覚えていたはずなのに。
佐藤君が今も彼のことを好きかもしれないと思ったら。
この子の少し、寂しげな瞳の色に気付いてしまったら。
暗い感情は、自然と薄れていってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!