1999人が本棚に入れています
本棚に追加
「とにかく、佐藤君への用件は彼に直接お願いします」
「はいはい。あんた、……名前は?」
「え? 村上、です」
「下の名前は?」
「瑞希、ですけど」
「ふうん……」
値踏みするように僕を見て、彼は言った。
「バイバイ、瑞希ちゃん」
そうして彼は踵を返し、駅方向へと去っていってしまった。最初から最後まで、訳の分からないひとだった。
「……早く帰ろ」
何だかどっと疲れた気がする。
小さな災難のことより今夜の夕飯に思いを馳せて、僕は彼が歩いていったのとは逆の方へと足を進めていった。
最初のコメントを投稿しよう!