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お帰りなさい、と佐藤君が言う。いつの間にか、その低い声に慣れてしまった自分がいる。 「少し、遅かったですね」 「え? そうかな」 佐藤君の元彼に会ったことは、彼に話すつもりはなかった。 告げ口のようになるのは避けたかったし、あの子も話されたくないんじゃないかなと思ったから。 「ごめん、塾を出るのが少し遅かったのかも」 「そうですか。お疲れさまでした。すぐごはんにしますね」 ごめん、と僕は再度心の中で謝り、彼の後についてリビングへと入った。
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