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リビングのテーブルの上には既にガスコンロがセットしてあり、土鍋の蓋の隙間から微かな蒸気が立ち上っていた。 「いつの間にか、鍋のおいしい季節ですね」 佐藤君と最初に会ったのが十月下旬。今は月が替わって十一月。 暦の上では冬が来ている。 「あ、着替えてきたほうがいいですよ。キムチ鍋なので、もしシャツに付いたりしたら大変ですし」 「分かりました。すぐ着替えてくるね」 自室に入り、スーツから私服に着替える。 ほんわかしているだけではいけない、と僕は自分を戒めるように頬を軽く叩いた。 まだ、恋人の有無を佐藤君に確認する、という課題が残っている。訊かないと、先へは進めない。 「どう、切り出そう……」 悩みを抱えつつ、僕は佐藤君の待つリビングへと戻っていった。
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