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「そ、そういえば、佐藤君は今付き合ってるひととかいるの?」
あ、訊いちゃった。
いたたまれなさから逃れようとして、訊けずにいたたことを訊いてしまった。
そっと様子を窺うように彼を見ると、戸惑いがちな瞳に出会う。
「何ですか、急に」
困ったように笑う彼は、どうやら質問の意図を測りかねていたらしい。確かに、少し唐突すぎたかもしれない。
「いや、何となく。さっき、ひとりだとつまんないみたいなこと言ってたから、どうなのかなって」
「……そうですね。今は、いないです」
佐藤君に恋人がいないからといって、自分に順番が巡ってくるわけではないのだけれど、何となくほっとした気持ちになる。
「そっか」
「はい。あ、でも」
「でも?」
「好きなひとは、います」
これは、失恋になるのだろうか?
彼の切ない目の色に、僕は自分の身体が冷たく強張っていくのを感じた。
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