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「あ……、そう、なんだ」 好きなひと、と聞いて。 僕がとっさに思い浮かべたのは、先程会ったばかりの佐藤君の元彼だった。 芸能人にいてもおかしくないような、甘い顔立ちの青年。やっぱり、今好きなひともそういう感じなんだろうか。 「どんなひと?」 会話を繋ぐためだけに質問すると、佐藤君は目を細め、口元を緩めた。 「年上の、癒し系です」 奇跡的に、半分だけ自分とも合致した。 しかし元彼は同い年だったのだから、別に年上が好きなわけではないと思う。重要なのは後者であり、そして僕は癒し系ではない。 「癒されてるんですか」 「そうですね。結構」 僕を癒してくれている彼は、僕の知らない誰かに癒されている。 そうだよな、癒すより、癒される方がいいよな。 寂しいけれど、そう思う。
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