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「村上さんは、どう思います?」 「え?」 卓上コンロの位置を少しずらしてテーブルに手を着き、佐藤君は僕との距離をわずかに詰めた。たった数センチ近付いただけで、心臓が早鐘を打つ。 「どうしたら、俺のことを好きになってくれると思いますか?」 いや、僕はもう好きですけど。 とは言えない僕は、少し考えるふりをした。 「うーん……、物理的に距離を縮めるといい、と四谷さんなんかは言ってたけど」 「もう、してるつもりなんですけど」 なるほど、イケメンからしたらそれくらいのことは普通なのかもしれない。僕は今朝失敗したばかりだが。 「じゃあ、何か得意分野でアピールするとか……? 佐藤君だったら、手料理を振る舞うとかかな」 「それも、実践済みです」 実践済み。 そっか、この料理を振る舞われているのは僕だけじゃないんだ……。 自ら提案したことでショックを受ける自分が、ばかみたいだった。
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