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渾身の力で走り、男から距離をとる。
視界の隅に小さな納屋が見えた。
脇にある小さな横道から入り、納屋の影に隠れて、乱れた呼吸を整えながら、考える。
どうする?
駅には戻れない。
タクシーか友人を呼ぶか?
いや、ダメだ。スマホは鞄の中に入ってる。財布も一緒に駅に置いてきた。
どこかの民家で電話を借りて呼ぶしかない。
ぐるぐると思考している時だ。
パキンという……枝を踏み分ける音。
音のする方を見て、再び身体が固まる。
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