act.2 罠

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渾身の力で走り、男から距離をとる。 視界の隅に小さな納屋が見えた。 脇にある小さな横道から入り、納屋の影に隠れて、乱れた呼吸を整えながら、考える。 どうする? 駅には戻れない。 タクシーか友人を呼ぶか? いや、ダメだ。スマホは鞄の中に入ってる。財布も一緒に駅に置いてきた。 どこかの民家で電話を借りて呼ぶしかない。 ぐるぐると思考している時だ。 パキンという……枝を踏み分ける音。 音のする方を見て、再び身体が固まる。
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