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中性的な美しさを持つ――私の懐刀。
「お茶。お持ちしましたので、こちらに置いておきますね」
艶然と微笑みながら、私の横に静かに湯呑みを置く。
「作品。誰かの御名前ですか?」
いましがた仕上がったばかりの作品を見ながら、寒波が私に問うた。
「ええ、依頼人の……お孫さんの名前だそうです。一つ書いていただけませんか……と」
「とても……可愛くて大切なんでしょうね……」
「ええ……。鬼の会長の異名をとるあの方が……お孫さんの話をしてる時は、見てられないぐらいに相貌を崩して笑ってましたから」
苦笑すると寒波が冷たい表情で呟いた。
「僕には縁のない話ですね……」
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