act.9 罪と罪 罰と罰

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いつの間にか眠っていたらしい。 暗い部屋の中で目が覚めた。 否。 全てが闇に包まれているわけではない。 うすぼんやりと灯りが見える。 ポツリポツリと点在するようにして見える小さな灯り――。 あれは……蝋燭の灯り? 違う……行灯に照らされた蝋燭の灯り……。 起き上がって様子を見ようとして身体の異変に気付く。 ――動かない。 正確に言えば、身体に力が入らない。 甘くて、頭の奥が痺れるような香りが部屋中に漂っている。 「目が覚めましたか?」 鈴を転がすような澄んだ声――。
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