259人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
寒波の顔が炎に揺らめき、妖しい陰影を作る。
「なんで……」
力の入らない身体。研ぎ澄まされた感覚。
必死になって抗おうとしても、身体が言うことをきいてくれない――。
「なんで?」
妖しい陰影の中――。
酷薄な微笑みを浮かべながら、寒波が私の髪を撫でた。
「なんでこんなことをするのか? なんで僕は動けるのか? 聞きたいのは……どちらですか?」
髪を撫でている手がゆっくりと下に滑り落ち――服のボタンをひとつひとつ、丁寧に外していく。
「や……」
力の入らない身体で、それでもなんとか抵抗しようと、寒波の身体を腕で押してみる。
「まだ、そんな力が残ってたんですね……。たいしたものだ……」
皮肉を込めて笑いながら、その腕をいとも簡単に払いのける。
最初のコメントを投稿しよう!