act.11 哀歌《エレジー》

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男がチラリと私を見た。 その視線で感じた。 この男は――人の上に立つことに慣れた男だ――と。 そうして、もうひとつ。 どこかで見たことのある男だ、と。 それがどこなのか思い出せない。 モヤモヤとした不安が広がる――。 「……あの」 沈黙を破ったのはユウだった。 「どういったご用件でこちらに?」 男がユウを見る。 「いや……貴方が自らこちらにおいでになるなんて珍しいですから、佐多さん」 佐多……。 その言葉で頭にひっかかっていた――思い出せない誰かを思い出した。 『代議士・佐多亨』 政財界に大きな影響力を持つ……有名政治家――。
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