act.11 哀歌《エレジー》

6/25
前へ
/25ページ
次へ
「自ら……ね」 低くて、良く響く声――。 テレビの街頭演説でも良く響く声だったな、と。 とりとめもなくそんな事を考える。 「呼ばれたんだよ、不肖の息子に」 「寒波さんが?」 “寒波さん”という言葉を聞いた瞬間、佐多がくっと喉を鳴らして笑った。 「……まだ、そんな“ごっこ遊び”をしてるのか? 下らんな……」 「あんたには関係ないだろう」 思わず息を飲む。 寒波の雰囲気が……纏っている空気が一変している……。 彼の……こんな人を突き放すような態度は初めてだ。 私をなぶる時でも、ここまではなかった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

235人が本棚に入れています
本棚に追加