act.11 哀歌《エレジー》

8/25
前へ
/25ページ
次へ
「ねぇ、良いでしょう?」 ニコニコと笑いながら、佐多を見ている。 それは、無邪気な子供そのもので――。 佐多と寒波はにらみあうようにしている。 先に動いたのは佐多だった。 「下らんな……」 寒波の表情がピクリと動く。 「自分がめんどうを起こした女の始末を頼んだり、女の調達を頼んだり……。挙げ句、結婚したい云々……。わがままも大概にしろよ」 「わがまま? 僕は貴方と同じ事をしただけだ。そっちが選んできた女と一緒になってやるから、彼女を愛人にしても文句は言うなよってね」 佐多の顔が一瞬だけ、悲しげに歪んだ。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

235人が本棚に入れています
本棚に追加