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「いった…。あ、すんませ…。って、何だ先生かよ」
「何だとは何やねん」
ぶつかったのは御法川で、面倒くさい奴に捕まってしまったと、心中で舌打ちをした。
「お、次音楽なんか」
持っていた教科書を見て、御法川は言った。
「何で二冊も持ってん?」
「ああこれは、霧那がトイレ行くからって持たされて…」
「ほー…」
ぼんやりした声で、適当に相づちを返された。特に興味も無いことだったのだろうか。だったら聞くなと、一人で考え、一人で突っ込んだ。
いよいよ面倒になってきて、じゃ、と横を通りすぎようとした時、御法川が「気いつけろや」と呟いた。
「何にすか?」
「成績や、成績。居眠りしたらあかんでー」
背中を向けたまま手を振って、御法川は階段を下りていった。
寝たら霧那に叩き起こされるんだよと、無言に悪態をついて音楽室へ歩き出す。
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