純愛センチメンタル

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「……っ」 思い出した。 完璧に思い出した。 だけど子供の頃と今とじゃ、感じる言葉の意味も違う。 「ど、どうせ、お子さまに人気の戦隊ヒーロー程度だろっ」 冗談混じりに答えたけれど、彼女の顔が上手く見られそうにない。 気恥ずかしくて、すぐさま前に向き直り、また彼女の手をしっかりと引いて歩き始めた。 「……」 「……」 「ミコちゃん……そうじゃないよ」 高く群青の空に光る星。 雲の切れ間から顔を出した月は、静かに彼女の白い肌を照らして。 それは瞳奪われる程、艶やかに彼女を彩る。 「私、あの時あなたに伝えられなかった事があるの」 「は?」 月光に浮かび上がる、ほんのり染まった頬。 躊躇いがちに瞼を伏せる仕草。 微かに感じ取った、甘酸っぱい“初恋”の香り。 「私はね……ずっと……」 .
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