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「ミコちゃんは……あの時と同じ。ずっと私の中で変わらないの」
彼女は懐かしそうに、木々の隙間に映る群青の夜空を仰ぐ。
あの時?
そうだ、さっきもそんな話をした。
「それってさ……」
声をあげたと同時、突然後ろの雑木林からガサガサと渇いた音が響いて。
「……きゃ、っ」
かれんちゃんが咄嗟にもう一度、俺のシャツの裾を握り締めるのが見えたーーー
「……」
「……」
振り出しに戻った。
初恋の君、東雲かれんはまたしても俺の腕の中。
だけどさっきとは違う。
変な下心なんてなくて、ただ震える彼女の肩を抱き寄せる。
渇いた口唇も、熱い腕も。
確かに“あの時”を思い出しながら、ゆっくりと彼女に声を掛けた。
「なぁ……強がんなよ」
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