純愛センチメンタル

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前を向いたままそう口にすると、瞬時にざわざわした夜の風にさらわれて行った。 「……」 聞こえたのか、聞こえていないのか、かれんちゃんは答える事なく繋いだ手にキュッと力を込める。 『バカみたい』 『子供じゃないんだから』 なんて思われてるかな。 どさくさ紛れに呼び捨てにしたのもバレてんのかな。 無性に恥ずかしくて、彼女の方へ振り返る勇気はなかった。 「……ありがとう」 ぽつり、囁くように後ろから声が届く。 「やっぱり。ミコちゃんてば、変わってないね」 意を決して一瞬足を止め、振り返ってみると、暗闇の中でも解るほどに柔らかく微笑むかれんちゃんの姿があった。 「私の答えも、あの時と同じ」 「……え?」 「覚えてる?」 「え?あ、ああ……」 「もしかして、忘れちゃったの?」 あの時……彼女はなんて答えたんだっけ? 尚も微笑むかれんちゃんの艶やかな口唇が、ゆっくりと開くのが見えた。 「御子柴君は、私のヒーローみたいだね、って」
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