爪先の声

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「貴子お姉さん、お姉さんは恋ってした事ある?」 「恋?」  唐突に優太は、幼気な眼差しを向けながら尋ねてきた。その純然たる双眸が私の心を貫いて、瞼の裏に熱い過去を蘇らせる。 「そうね……昔のお話だけど、気になるならしてあげよっか?」 「うん!」  まだ恋とは何かも知らない無垢な少年に、私は思い出を紡がずにはいられなかった。
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