死亡フラグが回収できません

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「ごめん親父。俺最近、耳が遠くなってるみたいなんだ。……もう一回言ってくれるかな」 「えーっとね、だからね、お仕事のせいで、パパがイギリスに行かなきゃならなくなっちゃったから、」 「ゆーちゃんには、全寮制の学校に行ってもらおっかなーって。ねー、パパ」 「ねー」 「ねー、じゃないよ!……つか、聞き間違いじゃなかったわけね」 ゆーちゃんこと、俺、橘憂緋は、目の前に座り、いちゃいちゃしている両親の顔面をまじまじと見つめながら、バレないように小さく溜め息をつく。 そして、意を決してからの、反撃開始。 「なんでまたこんな中途半端な時期に。俺、やっと今の高校に慣れ始めたのに……」 本日は、5月12日。転校をするには、時期がおかしすぎる。 学校に慣れた慣れてない以前に、家から徒歩で十数分もかからない位置にある普通校から転校なんかしたくない。 徒歩、十数分だよ?え?転校とかしたくないよ?せっかく、こんな近場の高校に入学できたんだよ?転校?やだやだ、めんどくさいじゃん! キモいということは充分理解しているが、この子煩悩な両親にはだんとつに効く、とっておきの奥の手を初っ端から使う。 通称、泣き真似。 「ああ、ゆーちゃん泣かないでゆぅちゃん!ぱぱ、パパ、ゆーちゃんが泣いてるパパ!」 「え、え、ゆーちゃん!だってその、ほら、ゆーちゃんが一人で暮らすなんて、パパとママは心配で心配で」 「……大丈夫だよ。親父と母さんは、俺が今いくつだと思ってんの?」 俺が泣いている、ということにオロオロしている両親に、呆れながら言い返す。 もちろん泣き真似は続けたままで。
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