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「ねぇ。死んでるの?」
透き通るようなその声は、もう一度俺に問いかけた
それと同時に聞こえてくる吹雪の音、車が走る音、人の声、とにかく色んな音が俺の耳に入ってきた
自分がどこにいるのかますますわからなくなってくる
聴力は回復したらしいが、相変わらずそれ以外は機能していない
「死んでる?」
声はもう一度俺に問いかける
__死んでなんかいない
そう返してやろうと口を動かそうとしたが、力が入らない唇は小さく震えるだけだった。
俺に話しかける女はいったい誰なのだろう、返事がないのを確認すれば、死人だと思ってその場から離れるだろうか
それとも、ただの盗人で、盗むだけ盗んで静かに去るのか....
思考を巡らしているうちに
ピトッ....
と。頬のあたりに冷たいものが当たる、それがその声の主の手であることにすぐに気づいた
「....へぇ、まだ生きてるじゃない」
声が俺の耳元で聞こえた
「話す力もないのね........そうよね、あなた傷だらけで雪の中、3日くらいそこで倒れてるんだもの」
__3日....か。
ずいぶんと長い時間倒れてるな
そもそも、3日も倒れている俺を知ってて放っておいたとは、この女も随分と突飛な性格をしている……
「素晴らしい生命力だと思うわ、何があなたを生かしているのか……私すごく気になるの、あなたの強い意志がそうさせたのか、それともあなたそのものが怪異?ねぇ、教えてくれない……どうにかして話せない?」
女は確認するように頬をペタペタと触ってきた
_____気持ちが悪い
なんどもなんども俺の体に触れる冷たい手と、俺の耳元で問われる質問の数々
「…や.…………めろ……気持ち……悪……」
どうにかして抵抗できないかと、必死になって出した声はとても小さく、かすれた声だった
聞こえるか聞こえないかの小さな声
そんな俺を見てどう思ったのか、女はクスクスとはなで笑っていた
「第一声が気持ち悪いなんて、失礼しちゃうわ」
そんな事をいいながらも、女の声は明るく、腹を立てているようには聞こえない。
「私が今、動かないあなたの首を閉めれば、あなたはすぐに死んじゃうのよ」
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