ポセイドンの湯

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何だこのメモは! 何で初めて会ったばかりのオレに、下僕になる? それにあの御方って、オーナーの事か? さっぱり解らん。 まあメモは気になったが、今は考えてもしょうがない。 オレも風呂に行かないと。 慌てて準備をして風呂に向かった。 風呂は大浴場と言うほどは広くないが洗い場が5つと大小2つの浴槽があり、オレひとりなら充分にくつろげる空間だ。 かけ湯がわりにシャワーを浴び大きい方の浴槽に浸かった。 窓は少し高い位置にあり、外の景色を眺めるという事はできないが、こういうのも悪くない。 そろそろ湯舟から上がろうかと思った時、ひとり浴室に入ってきた。シライの話では顔を合わせる事はないだろうと言っていたので入り口の方に振り返ると、タオルで胸から下を隠しながらシライが入ってきた。 「え、シライさん? こっち男湯ですよね。」 「はい、お気遣い無く。 榎戸様のお背中を流して差し上げます。 さあ、どうぞこちらへ。」 「いや、いいです。 おかまい無く。」 「ご心配には及びません。 これもお仕事ですので。」 「いや、ほら、誰かきたら…」 「では誰もこなければ問題ありませんね。 先程申し上げましたように、他のお客様とはほとんど顔を合わせる事はございません。 それに、ポセイドンの湯はただ今清掃中となっておりますので。」 「いや、しかし。」 「楠森様のことを気にされているのですよね。 ただ今楠森様は同様にエステを受けている頃だと思います。 それに、他にご要望が無ければ背中を流して差し上げるだけですので。」 「ご、ご要望って?」 「はい、シャンプーや、爪のケア等の男性用エステ、足のツボ押し等のマッサージをはじめ、お客様のご要望ならばすべて叶えて差し上げます。」 「すべて…って。 それにシライさん、タオルだけじゃないですか。」 「通常は薄手の作務衣のようなものを着てご奉仕させて戴くのですが、これは榎戸様への奉仕に対する私なりの覚悟のようなものです。 榎戸様のご要望ならば、どのような事でもさせて戴きます。」 これ以上話しているとこっちが墓穴を掘りそうなので(しかも抜け出せないほど深い)とりあえず背中を流して貰う事にした。
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