終章 泡沫の迷宮

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短くて――まるで一睡の夢のような――幻のような愛だった。 お互いの本当の名前も知らない。 けれども。 確かに私は、愛し、愛され――。 官能に身をゆだね――。 それはただ―― 男と女がむつみあい――肌を通じて、愛を官能に変える幸せ。 奪い、奪われるのではなく―― 求め、与える、官能の限りを感じ尽くす――幸せ。 欲望を愛に変える――神が人に与えてくれた、男と女の幸せ――。 私は――幸せだった。 あの二人がそれを教えてくれた。 だから、あの二人が消えて、こんなにも哀しくて――。
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