終章 泡沫の迷宮

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風が私を横切る――。 私の手にあった和紙が風に飛び、蒼窮の空に消えて行った。 木々がざわめく。 その中で――私は至上の法悦に身をゆだねる。 あの二人を――探そう。 母の手鞠唄を求め、旅をしたあの青年のように―― 私も求めよう。 たとえそこが魑魅魍魎の住む場所だったとしてもかまわない。 あの二人が居るならば――あの二人を追って生きられるなら――私は幸せ。 魂から縛られた私は――あの二人の魂を感じるだけで――至上の悦びを感じる。 官能に――身をゆだねられる。 それは――この上ない幸せ――。
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