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「だとしても、神様だなんて大仰な存在でなくても、人と人との関係は心の寄りどころになるものだから、男と女の関係もあるし、そこに愛が生まれもいいと想うんだけどね。恋愛だーとから、あいつ好きーあいつキモいわーとか、青春にはっちゃけてる年頃を通り過ぎると、愛は金になり恋は歳になるのよ。お金持ちで若くて、その上でイケメン、もしくは美人でしなかいのよね。先生みたいな三十路女なんてそこらへんの石ころよ。ダイヤの原石にもなれないのよ。磨く部分がないのよ。磨けば磨くほど、どんどんこそげ落ちていくわ。あれ、何なのかしら目の前から何かが……」
先生が二度目の自爆を起こす。担任教師のガチ泣きに誰もがどん引きしている。途中までけっこういいこと言えてたのにどうしてこんなところに行き着くのだろうか、もしくは、結末が思いつかなくて強引に三十路女の愚痴に持って行ったのかもしれない、なんというか哀れだ。神様なんてこの世に居ないのかもしれない。
「ふっ、フフフ、いいのよ。なーにが結婚よ。なーにが幸せな家庭よ。そんなのは幻想なのよ。もうここからは弱肉強食の世界がやってくるわ、そうなれば邪魔な夫なんているだけ無駄だし、今のうちにコツコツ貯蓄しておけば老後も……ぐすっ、一人のご飯だって美味しいんだから、ファミレスだなんて平気で一人ランチできるんだから」
と言いかけた担任を生徒数人が羽交い締めにする。もう誰も聞きたくないのだろう。私も聞きたくないから誰か彼女を幸せにしてあげてください。
担任教師の愚痴満載な授業を終えた放課後、私は一人で学校の廊下を歩いていた。夕暮れ時の時間は好きだ。誰も居なくなった廊下を歩くとなんとなく一人だけになった気分になる。もちろん、そんなわけないだけれど、わかっているのだ。わかっていても、一人になりたい気分になる、こればかりはどうしようもない。ブブブブブ、ブブブブブと携帯が振動する。マナーモードにしていた携帯が振動していた、あまり出たくはないけれど、出なければもっとめんどくさいことになる。鞄から取り出した携帯にはズラリと一人の名前が並んでいた。
『厚真宰一(アツマ、サイイチ)』
気分が一気に崖っぷちから落ちていく、夕暮れ時の心地いい気分が一気に崖の底に落ちて粉々に砕け散る。厚真宰一の名前だなんて見るだけで気分が悪くなるが、今度はメール着信から、通話着信に変わった。まるでどからか
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