プロローグ

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ー五年前ー 「もう一度聞く。これはどう言う意味だ?」 豪華な日本庭園には黒地に白い線が入った丈の短い着物を着た少女を囲うように黒装束の集団がいた。 その一番外側にいる老人は少女に確認するように質問する。 その質問に少女は笑う。 「どう言うことって?それはこう言うことですよ?花柳斎サマ 私が仕えるのは天城(あましろ)家でも天城家当主の花柳斎サマでもない…天城涼と言う一人の人間なのです。ですから私は従者として主の意向に従ったまでです」 「だからと言って拾い、育ててやった恩を仇で返すのか」 「いえいえ、そんな気はありませんよ?これからたーぷりとその恩を主に返しますから」 少女はさっきの笑いとは違う爽やかな笑みを浮かべると地面に沈んでいった。 『それでは、私の主が心配しながら帰りを待っているので失礼しますよ』 日本庭園全体に響くような少女の声を最後に静寂が訪れた。 老人の手にある扇子が折れると同時に黒装束の集団と老人の姿が日本庭園から消えた。
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