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錦戸くんと別れたあと、俺はトボトボと帰路をたどっていた。
はずだけど、いつのまにかしゃがみこんで、嗚咽を漏らして泣きじゃくっていた。
「うっ……ぇ、うぁあ、…」
錦戸くんは、やっぱり俺のことなんて見ていなかった。
錦戸くんからもらったぬいぐるみも今じゃ抱きしめることすら戸惑う。
流れてく人混みの狭間で、誰かがしゃがみこんで泣いてたって誰も気にしない。
気味悪そうにみんな目を逸らして。
「手越……?手越だよね、どうしたの?」
そんな中、
俺の名前を呼ぶ、聞きなれた声。
誰よりも一緒にいてくれた、優しい優しいやつの声。
でも今は、たまらないほど遠ざけたい声。
「まっすー……」
まっすーが心配そうに俺の顔を除きこむ。
「なんで、そんなところで泣いてるの……?」
「…………」
「とりあえず、家来なよ……」
「…………」
まっすーに抱えられるようにして、まっすーの家に運ばれた。
「手越、……本当、どうしたの。いつもの手越じゃないよ」
まっすーが心配そうに様態を訪ねながら俺にお茶を出す。
俺は、まっすーのそういうところが嫌い。そういう優しいところに、きっと錦戸くんが惚れてると思うから。
「……まっすーさ、俺……」
「うん……」
「今日一日、幸せだったはずなのになんか違ってさ……。全部俺が思い描いてた事が上手くいったのに、なんでこんな、満たされないんだろう……。本当でいいと思ってるのに、嘘だったらなって、夢だったらなって思っちゃうんだよ…」
「手越………………?」
「俺、ちゃんとここにいるよね……?俺はまっすーじゃないよね……?」
「手越……は、手越だよ……?」
「そっか……」
まっすーはそれから何も言わずに、ただ一口お茶を飲んだ。
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