第二章

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増田said 手越があの日街で泣いているのを見かけたとき以来、手越はあまり僕に話しかけることはなくなった。 原因なんてわからない。 けどあの日の手越はどこかおかしくて。 触れて欲しくないなら、僕はできるだけ避けてあげようと思って自分から尋ねることはなかった。 僕がたとえ、ある種の悩みを抱えていたとしても。相談できる状態ではなかった。 「まっすー。おはよう」 「うん、おはよう」 山下くんの快い挨拶とともに下駄箱をあける。 下駄箱の中には、白い封筒が5通入っていた。 封筒の中身は見なくてもわかる。 僕の私物が誰かの精液に濡れて詰められているのだ。 こんなひどいことをされるような覚えはないのに。 僕はため息混じりに白い封筒をゴミ箱に捨てて、教室に向かった。 椅子に座ると、ぬちゃっとした粘液がズボンに付いたような音がして、思わず立ち上がる。 「まっすー、どしたのそれっ!」 小山が声をあげて俺のズボンを指さす。 まさか椅子にまで細工があったとは。 「なんだよこれ……」 そう言って、シゲがティッシュで僕のズボンについた粘液をとってくれた。 「なんだこれ…、まっすーなにこれ?」 「わかんないっ……」 首を振ると、シゲは気をつけろよって言ってティッシュを捨てに行った。 最近行為があからさまにエスカレートしてきている。こういうのって、誰に相談すればいいんだろう。 いつも対策に途方に暮れて家に帰る。 玄関の鍵を回したとき、背後からどたどたと騒々しい音がして、振り返ろうとしたその前にいしきをうしなった。
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